士業のプロフィール写真撮影のポイント
過去に『企業診断』に弊社が寄稿した記事が掲載されたことがありますが、ここでは改めて士業の皆様向けに記事の内容を端的にまとめたいと思います。
マーケティングの格言に「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」(レビット)というものがありますが、士業の皆さんもプロフィール写真を撮影する際の目的は、「写真そのものを得ること」ではなく、プロフィール写真を通じた「お客様の獲得」のはずです。
つまり、士業のプロフィール写真で必要なことは「あなたが良いと思う写真」ではなく「お客様が良いと思う写真」だということです。
それでは、貴方の未来のお客様はいったいあなたに対して何を求めているのでしょうか?
お客様が士業に求めているもの
そのことを明らかにするために、弊社ではインターネットアンケート調査を利用して「お客様が士業に対して何を求めているか」を調べてました。
お客様が中小企業診断士に求めているもの
以下のグラフは、『Q.あなたが中小企業診断士に求めるものは何ですか(複数回答可)』という問いに対する世間の回答です。
■お客様が中小企業診断士に求めるもの
サンプル数:115
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:プロモートスタジオ巣鴨(フォト・パートナーズ株式会社)
対象者:20代~60代の男女
割付:男女50%の均等割付
調査の結果、世間の方々は「信頼性」「責任感」「親しみ」などを求めていることがわかりますが、特に「信頼性」を求めていることがわかります。
お客様が弁護士に求めているもの
それでは、次に弁護士で調べてみましょう。
■お客様が弁護士に求めるもの
弁護士に対しては、中小企業診断士以上(81.2%)に「信頼性」を求めていることがわかります。
お客様が税理士に求めているもの
続いて、税理士さんで調べてみましょう。
■お客様が税理士に求めるもの
税理士も、やはり「信頼性」が求められていることがわかります。
士業に関しては、調査を行ったのは3士業だけですが、弁理士、社労士、行政書士、他士業の場合は「信頼性」を求められていない、と考えることのほうが難しいのではないでしょうか。
他の業種でも調べてみると
参考までに他業種でも調べていますので掲載しておきます。
お客様が保険の営業マンに求めているもの
続いて、保険営業マンで調べてみましょう。
■お客様が保険営業マンに求めるもの
保険営業マンも、やはり「信頼性」が求められていることがわかります。
お客様が不動産の営業マンに求めているもの
続いて、不動産営業マンで調べてみましょう。
■お客様が不動産営業マンに求めるもの
もう、言うまでもないですね。当然「信頼性」です。
士業のプロフィール写真はどう撮るべきか
ここまで「信頼性」が求められているとわかれば、次はお客様が「信頼性がある」と感じる写真の撮り方が何かを明らかにすればよいわけです。
こちらがその概念図になります。
例えば撮影方法1〜6を試してみて、お客様が『撮影方法6』に対して最も「信頼性がある」と感じるのであれば、理屈上は『撮影方法6』で撮った写真が最も士業のプロフィール写真として適している、ということになります。
しかし、現実の撮影方法はもちろん6種類だけではなく「背景色」「表情」「ライティング」「画角」「被写体の着ている服の色」等々…、組み合わせようと思えば無限に方法を考えることがができます。
ですので、ここでは、その要素を写真に影響を与える影響が大きいと思われる「背景色」「表情」「ライティング(照明の当て方)」の3軸に絞って調査を実施しました。
その3要素を変化させて撮影した画像を使い
Q. 以下の写真で最も「信頼性がある」と感じる写真を1枚選んでください。(単回答)
という質問を投げかけました。
サンプル数:317
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:プロモートスタジオ巣鴨(フォト・パートナーズ株式会社)
対象者:20代~60代の男女
割付:男女50%の均等割付
その回答結果は以下となります。
「背景色」はどの色が一番信頼性が高い?
背景色に関しては、プロフィール写真で使われることの多い「白背景」「グレー背景」「紺背景」の3パターンで調査を行いました。
上段が「白背景」、中段が「グレー背景」、下段が「紺背景」になります。
これら3枚をグルーピングした結果、得られた回答は以下となります。
白背景が最も信頼性が高く、次いでグレー背景、紺背景はあまり信頼性が高くないことがわかります。
「表情」はどの表情が一番信頼性が高い?
実は、上の画像は、同時に表情に関する調査も行われています。
左列が「真顔」、真ん中が「微笑」、右列が「笑顔(歯を出している)」です。
これら3枚をグルーピングした結果、得られた回答は以下となります。
背景色に関しては白背景とグレー背景で「これ!」と言える数値は出ませんでしたが、表情に関してはダントツで「微笑」の信頼性が高いという結果が出ました。
正直に言いまして、これは意外な結果ではないでしょうか?
真顔の数値が低いのは驚きは少ないですが、歯を出した笑顔がここまで数値が低いとは私も思っていませんでした。
過去にプロフィール写真を撮りに行き笑顔をカメラマンに強制され嫌な思いをした経験がある方もいると思いますが(笑)、数値上はそのカメラマンの行為は間違っていたということになります。
「ライティング」はどの方法が一番信頼性が高い?
ライティングに関しては、表情を微笑で統一した上で、2枚の画像を使って調査を行いました。
画像Aが上から順に①「フラットなライティング」②「影のあるライティング」③「影のあるライティングの陰部分をハイライトでおこしたライティング」の3パターンで調査を行いました。
画像A
これら3枚をグルーピングした結果、得られた回答は以下となります。
フラットに光が当たった写真が最も信頼性が高く、次いで影+ハイライト、影をつけた写真は信頼性が高くないことがわかります。文字通り「影のある男」に見えるということでしょうか。
さらに、画像Bは①を「硬い光」と「柔らかい光」の2パターンに分け調査したものになります。
画像B
この結果は、硬い光が34.4%,柔らかい光が65.6%となっており,柔らかい光のほうが好まれていることがわかりました。
以上の結果から、「背景色」は白で,「表情」は微笑し,「ライティング」はフラットで柔らかい光の写真が最も信頼性が高いという仮説が成り立ちます。
しかし、これは理屈上はそうなるという話です。実際にはどうなのでしょうか?
3要素をミックスして調査を行ってみる
上記3要素をランダムにミックスした写真が以下画像Zになります。
上記の仮説が正しければ、以下の画像でお客様が最も「信頼性がある」と答える写真はNO.8になるはずです。
そして、こちらが回答結果になります。
果たして、最も選ばれた写真はNO.8でした。
年代による好みの差
それでは,この条件で撮影した写真が士業として最も「信頼性のある写真」だと決め付けてよいのでしょうか?
そう結論づけるのは早計です。
なぜなら、画像Zに関する調査結果を各世代に分けてクロス分析してみると異なる結果が出てくるからです。
10~60代の6世代に分けて分析したところ、NO.8を1位に選んだのは、10~30代のみでした。
40代と60代はNO.6を選び、50代はNO.10を選びました(2番目に選んだのがNO.6)。
しかし、NO.6の写真に関しては10代では4番目、30代で3番目、20代に至っては7番目、わずか3.7%しか支持されていません。
世代によって好みに大きな差が出ていることがわかりますが、それでは、この2枚の写真に対する意識の差を生んだのは「背景色」「表情」「ライティング」の中の、どの要素なのでしょうか?
ここでは、話を単純化させるため10~30代と40~60代の2世代に分け、さらに、男性・女性の軸も入れて3重クロス分析をしてみました。
すると、「ライティング」の要素に関しては、世代ごとに大きな好みの差はありませんでした。
差が生まれていたのは「背景色」と「表情」の要素です。
「背景色」に関しては、10~30代では男女ともに白色の背景が好んでいます。40~60代では男性は白背景を選んでいますが、女性はグレー背景を最も好んでいます。
また、全体で数値の低い紺色背景に関しても、10~30代が好んでいないだけで、40~60代に限ればそこまで嫌われていません。
このことから若い世代は背景が明るい色であることを求め、年配の方々は背景に重厚感を求めていることが読み取れます。
「表情」に関して、各セグメントで最も選ばれたのは微笑で、これは全世代変わりません。
しかし、注目すべきは2番目に選ばれたもので、10~30代では笑顔が好まれていますが、40~60代では真顔のほうが好まれています。
10~30代は優しそうな人に信頼感を覚え、40~60代は真面目そうな人に信頼感を覚えるということでしょうか。
まとめ
以上の分析から、なぜ若い世代がNO.8を選び、年配の世代がNO.6を選んだか、その一因が見えてきました。
若い世代は明るさ、年配の世代は重厚感を求めているのです。
当スタジオではこのポイントを押さえることはプロフィール写真にとって重要だと考えています。
つまり、プロフィール写真においてはターゲットを絞ることが重要なのです。
マーケティングの本には必ず「事業はターゲットを絞りなさい」と書かれていますが、やはりプロフィール写真もまた漠然と撮るのではなく、ターゲットを絞る必要があるのです。
前述のように、20代をターゲットとしているのにNO.6の写真をプロフィール写真に使った場合、逆に信頼性を損ねてしまいます。
ですので、当スタジオでは撮影前に必ず、①狙っているドメイン、②ターゲットとする年代・性別について伺っています。
それは、そこが明らかにならないと「良い写真」が定義づけられないからです。
今回は「背景色」「表情」「ライティング」についてお話ししましたが、服装やネクタイの色、ポージングについても性別毎、年代毎のデータがありますので、撮影当日モニターの写真を見ながら擦り合わせていきましょう。
長文を読んで頂きありがとうございました。
上記の調査結果は、あくまで今回のモデルに関するもので、一つの統計的な事実の例として参考になさってください。
もし上記の調査結果に関して質問がある方、ご自身のプロフィール写真のお悩みがある方は、問い合わせフォームにお名前とメールアドレスを記載の上、是非お気軽にお問い合わせください。
「いつも写真では太って写ってしまうけど、なぜですか?」「うまく表情が作れないのですが、解決方法はありますか?」など、プロフィール写真に関することは何でもお答えします。